2019-03-14

【ミャンマー法務ブログ】第3回ミャンマーにおける法人設立

第3回となる本稿では、ミャンマーでの法人設立について解説します。

 

 

1. ミャンマーの外資規制

ミャンマーに進出するに当たり、まず確認すべきは外資規制です。ミャンマーで実施予定の事業を外資100%で行うことができるか、合弁が必要か、ミャンマー内資会社のみが実施できるかにより進出スキームの選択肢が大きく異なります。

外資規制については、投資法に基づき発布された2017年4月10日 投資規制業種通知(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)において、①「連邦政府のみが実施するものとされている投資活動」9業種、②「外国投資家による実施が許されない投資活動」12業種、③「ミャンマー国民又はミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種、④「関連省庁からの承認を受けることにより許される投資活動」126業種の合計169業種が規定されており、当該規定に基づく制限を受けます。

したがって、事前に上記のいずれかの業種に該当しないか否かの確認が必要となります。記載が曖昧な業種もありますが、その場合にはMICに対して事前確認申請を行うことにより、いずれの業種に該当するかの回答を得ることができます。もっとも、当該回答はMICが法的な保証を付与するものではないため、その後にMICの対応が変更される可能性があることに留意が必要です。  

 

2. ミャンマーでの法人設立の選択肢

上記の外資規制をクリアした上で、ミャンマーに法人を設立する方法は主に以下の4つの方法が挙げられます。

①会社法に基づく現地法人又は支店
②①+投資法に基づくエンドースメントの取得
③①+投資法に基づくMIC許可の取得
④①+経済特区法に基づく投資許可の取得

多くの日系企業は、①の方法に基づき進出しています。②ないし④の方法は、製造業や不動産開発業など、土地を長期で使用する必要性の高い業種が主となります。

上記の①又は②のいずれを選択するかを検討する際の考慮要素としては、主に(a)投資法の恩恵を受ける必要性、(b)手続きに要する時間及び手続的負担、(c)初期投資額となります。

(a)投資法の恩恵を受ける必要性に関して、投資法では優遇措置として、法人税の一定期間の免税などの租税減免措置の恩典や、土地の長期の賃借権(最大50年、さらに、10年の延長を2回行うことができる)等が存在します。そのため、製造業等においては長期の土地賃借が必要であるため、投資法の恩恵を受ける必要性が高いです。ただし、租税減免措置については、所得税の免税は、2017年4月1日に発布された投資促進分野通知(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)で定める投資促進分野に該当する投資に対してのみ付与され、複数の基準はありますが、そのうちの1つの基準として300,000ドルを超える額の追加資金の支出が必要となります。

(b)手続きに要する時間に関して、②の場合には①の場合と異なり、会社法に基づく営業許可に加え、投資法に基づくエンドースメントを取得する必要があります。そのため②の場合には必要書類が増加し、かつ一般に投資法に基づくエンドースメントは、会社法に基づく営業許可以上に取得までに時間を要します。

(c)初期投資額に関して、投資法上は最低資本金が規定されていません。しかし、租税優遇措置を享受するためには300,000ドルを超える額が必要となります。他方、会社法に基づく会社の最低資本金額は製造業15万米ドル、サービス業5万米ドルであるため、②の場合には①の場合よりも多額の初期投資が必要となる可能性が高いです。

③については、以下のいずれかの場合のみMIC許可を取得する必要があります。

(i) 国家の戦略上重要な事業
(a) 通信、技術、運輸インフラ、エネルギーインフラ、都市開発インフラ、採掘又は天然資源、農業、市街地、メディアの各セクターかつUSD2,000万以上の投資
(b) 当局からのコンセッション等による案件かつUSD2,000万以上の投資
(c) 国境紛争・紛争影響地帯かつUSD100万以上の投資
(d) 国境をまたぐ投資かつUSD100万以上の投資
(e) 1,000エーカー超の土地を占有又は利用する農業関連投資
(f) 100エーカー超の土地を占有又は利用する非農業関連投資
(ii) 一定の資本金額を超える事業
(a) 予想される投資額がUSD1億を超える投資
(iii) 環境及び地域社会に深刻な影響を与える可能性のある事業
(a) 環境影響評価が必要となる事業
(b) 環境保護法により保護地域又は生態系保全地域に指定されている地域への投資
(iv) 国有地又は建物を利用する事業
(v) 別途政府により投資許可が必要とされる事業

 

④の場合、手厚い租税減免措置や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに25年の延長を行うことができる)が認められます。しかし、経済特区法は経済特区に指定されたエリアでの会社設立のみに適用され、2019年3月5日時点においては、ティラワ、ダウェイ、チャオピューの3つのエリアが経済特区として指定されているものの、ティラワのみが整備済みの現実的な進出候補地であり、ダウェイ及びチャオピューはいずれも整備は完了しておらず、実際に選択肢となり得るには時間を要します。  

 

3. ミャンマーの企業と合弁を行うか否か

原則として、合弁を行うか否かは任意に決めることができ、ミャンマーに進出するに当たりミャンマー人又はミャンマー会社との合弁が必須ではありません。しかし、上記外資規制の項目において述べた通り、投資規制業種通知においては、「ミャンマー国民又はミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種が規定されており、22業種のいずれかに該当する場合には合弁が必須です。

それ以外の場合には、従来の会社法上は、外資が1株でも株式を保有すると外国会社扱いとなったことから、合弁を行ったとしても外資規制を免れることができず、意味が乏しいものでした。しかし、2018年8月1日より施行予定の新会社法においては、35%までは外資が入ったとしてもミャンマー会社扱いとなることから、外資の出資比率が35%を超えるか否かで大きく異なることとなります。

また、2018年5月9日に発布された商業省通知においては、外資が80%を超えるか否かで、必要な初期投資額が異なることとなります。

さらにビジネス上の判断として、ミャンマー会社のネットワークなどを利用するために合弁する場合もあります。その場合には、会社法上、普通決議事項は過半数の賛成、特別決議事項は4分の3以上の賛成とされていることから、出資比率の目安として、50%及び75%が挙げられます。

これらを纏めると、以下のとおりになります。

外資比率 差異
0% ミャンマー内資会社のみに認められるGemやMining事業が可能
35%以下 会社法上、ミャンマー会社として扱われる
50%以上 会社法上の普通決議事項について可決可能
75%以上 会社法上の特別決議事項について可決可能
80%以下 小売業及び卸売業における初期投資額が異なる

 

近時、進出後数年を経て、合弁パートナーとの間で紛争が生じる事例も増加していることから、上記を参照に出資比率を慎重に検討した上で、ミャンマーに法人を設立することが望ましいでしょう。

 

<本記事に関するお問い合わせはこちら>

SAGA国際法律事務所 TNYグループ
日本国弁護士:堤雄史
連絡先:info@sagaasialaw.com
HP:http://tnygroup.biz/

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ライター

堤雄史

堤雄史

会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。 ヤンゴン(SAGA国際法律事務所)、クアラルンプール(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)に拠点を有する。

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