2019-03-25

【ミャンマー法務ブログ】第4回:最低賃金

第4回となる本稿では、ミャンマーの最低賃金について解説します。

 

 

1. ミャンマーの最低賃金法の概要、新最低賃金の決定過程

古い最低賃金法(The Minimum Wages Act, 1949)を改正する形で、新たな最低賃金法(以下「本法」という)が2013年3月22日に成立し、同年6月4日に施行されました。そして同法の施行細則は2013年7月12日に成立しました。本法は具体的な最低賃金額は定めておらず、最低賃金額の決定方法のみ規定しています。当該決定方法の詳細については後述します。

具体的な最低賃金額については、2015年8月28日に国家委員会より日給3,600チャットに確定し、2015年9月1日より適用される旨の発表がなされました。最低賃金について2年に1回見直しを行う旨が法律上規定されています。

国家委員会は、2018年1月2日、最低賃金案に関する通知 (国家委員会2018年第1号通知)を発布しました。概要としては、地域及び職種を問わず全国一律で、1日8時間で4,800チャット、1時間で600チャットという最低賃金を提案しています。この規制は10名以下の労働者の小規模事業や家族事業には適用されません。当該最低賃金案につき、60日間の異議申立て期間が設けられ、4,092件の異議が労働者側及び使用者側双方から申し立てられました。しかし、国家委員会は2018年3月5日付で全ての異議を却下しました。その後、政府の承認を得られれば直ちに新たな最低賃金額が有効となる予定であったものの、3月下旬に大統領の交代があり、4月は水祭りによる長期間の祝日などがあり、政府の承認が遅れていました。しかし、漸く2018年5月14日に国家委員会が最低賃金決定に関する通知 (国家委員会2018年第2号通知)を発布しました。これにより、当該通知日より1日8時間で4,800チャット、1時間で600チャットという最低賃金が直ちに有効となりました。  

 

2.ミャンマーにおける最低賃金の適用対象

本法はいかなる事業において働く労働者に対しても適用されます。但し、家族による事業における家族、政府又は地方政府の公務員、船員は対象外となります。また、10名以下の労働者の小規模事業にも適用されません。  

 

3. ミャンマーでの最低賃金の決定方法

最低賃金の決定方法について、政府により組織される国家委員会が通知により最低賃金を決定すると規定しています。その際、労働者及び家族にとっての必要性、既存の給与、社会保障給付金、生活費及びその変化、耐え得る生活水準、雇用機会及び製品の発展、国内総生産、物価、インフレ率等が考慮されます。なお、国家委員会とは最低賃金を公正に定めるため、関係政府機関、労働者、労働組織、使用者組織の代表者、及び最低賃金に関する事項に専門知識を有する専門家により構成される機関です。

最低賃金が決定されるまでの流れとしては、はじめに関連する連邦直轄領、管区又は州委員会が最低賃金を決める基礎事実の調査を行った上で国家委員会に対して所定の方法に基づき最低賃金率に関する提案を提出し、官報及び新聞に同提案を掲載します。同提案に異議がない場合、国家委員会は、政府の承認を得た上で、最低賃金率を決定します。異議がある場合、連邦直轄領、管区又は州委員会は再交渉を行い、再度最低賃金率に関する提案を行います。この再提案について精査され、政府の承認を得た上で最低賃金率が決定されます。当該最低賃金率に不服のある者は、最高裁判所に申し立てを行うことができます。最低賃金率決定後も、年に2回最低賃金率見直しのための国家委員会の会議が開催されます。

経済特区において働く労働者の最低賃金の決定方法に関しては、経済特区管理委員会が投資分野ごとの最低賃金率の提案を国家委員会に提出します。当該最低賃金率は少なくとも2年に1回見直されます。  

 

4. ミャンマーでの賃金の定義

上記方法により決定された最低賃金を下回る賃金を、使用者は支払ってはなりません。当該最低賃金を支払わない使用者は、罰則として1年以下の懲役又は50万チャット以下の罰金、若しくはその両方が科せられます。 そのため、「賃金」の定義が非常に重要となります。この点、基本給与に加え、時間外労働手当及び賞与が含まれる旨が規定されています。他方、交通手当、住居手当、食事手当、医療手当、チップ等は含まれません。  

 

5. ミャンマーの最低賃金の例外

最低賃金額未満の支払でも認められる例外的場合として、試用期間以前の必要な技術研修の期間については、3か月以内であれば、最低賃金額の50%を下回らない額を支払うことも認められます。また、試用期間中においては、3か月以内であれば最低賃金額の75%を下回らない額を支払うことも認められます。

 

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ライター

堤雄史

堤雄史

会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。 ヤンゴン(SAGA国際法律事務所)、クアラルンプール(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)に拠点を有する。

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