2019-03-18

【マレーシア法務ブログ】第3回:雇用関連の法規制③

TNYグループのマレーシア事務所の弁護士の荻原です。第1回・第2回に続き、本稿でもマレーシアにおける労働法制について解説します。

 

 

1. マレーシアの女性労働者

① 就労の制限
(1) 深夜労働の禁止
雇用法(Employment Act 1955)(原則として、月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等に適用される)は、雇用主は産業及び農業に従事する女性労働者を午後10時から午前5時までの間に勤務させてはならないとしています。また、連続する11時間以上の自由時間をあけずに勤務をさせてはならないと規定しています。
 
もっとも、雇用法は、労働局長は個別のケースにおいて、個々の女性労働者又は一定の類型の女性労働者を規制から除外することができるとしており、人的資源省のHPでは以下の条件を全て満たす場合には除外が認められうるとされています。

 ・勤務の間に11時間以上の間隔があること
・毎週30時間以上の休憩があること
・勤務シフトが固定されていないこと
・夜勤手当が支払われていること
・無料の交通手段が提供されていること

(2) 禁止される労働
雇用法は、女性労働者は地下労働(天然洞窟・縦坑・横坑での地下物質の採掘作業)に従事できないとしています。
 
(3) 人的資源大臣の許可
雇用法は、(1) (2)のいずれの規制についても、人的資源大臣は命令により例外的な禁止又は許可を定めることができるとしています。
 
例外の1つ目として、公共交通機関の乗務員があり、一定の条件を満たせば午後10時から午前1時までの間に女性労働者を勤務させることができます。もう1つの例外はシフト制勤務で、1日2回以上の交代がある人的資源大臣の許可を得た産業において勤務させる場合、女性労働者を午後10時から午前5時までの間にかかるシフトで勤務させることができます。もっとも、これらの場合でも連続する11時間以上の自由時間をあけずに勤務をさせてはならないという点は変わりません。

 
② 妊産婦の保護
(1) 出産休暇
雇用法は、女性労働者に対して、60日間の連続した出産休暇を取得する権利を付与しています。この出産休暇は原則として出産の30日よりも前から取り始めることはできず、出産後から取り始めることもできません。

(2) 出産手当
また雇用法は、
①出産の直前9カ月の間に合計90日以上その雇用主に雇用されており、かつ、
②出産の直前4カ月のいずれかの時点でその雇用主に雇用されていたこと
を条件として、女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を付与されるとものとしています。出産手当の額は、1日の通常の賃金額又は人的資源大臣が定める計算方法で計算した額のうち有利な方の金額とされています。
 
ただし、その出産の時点で既に5人以上の生存する子どもを有する女性労働者は、出産手当を受給する権利を有しません。
 
また、女性労働者は出産予定日の直前60日の間にその雇用主に出産予定日及び出産休暇を開始しようとする日を通知しなければならず、通知を行わないままそのような休暇を開始したときは、雇用主は通知がなされるまで女性労働者に対する出産手当の支払いを留保することができます。
 
また、退職を控えた女性労働者であって、その退職の日から4カ月以内に出産することを知っているか、そう信じる理由がある者は、退職の前にその雇用主に対して妊娠を通知しなければならず、これを行なわなかったときは、女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を与えられないものとされています。もっとも、通知を行わなかったことに合理的な理由がある場合等にはこの限りではありません。

 (3) 解雇規制
雇用主は、女性労働者が出産休暇を取得する権利を有する期間中にその女性労働者の雇用契約を終了することはできません(廃業を理由とする終了の場合を除く)。また、女性労働者が妊娠・出産に起因する疾病により業務に適さない旨の登録医療従事者の診断を得て期間満了後も引き続き欠勤をするときは、期間満了後の欠勤が90日間を超えるまでは、その雇用主は当該女性労働者を解雇し、又は解雇の予告を行なうことができないとされています。

(4) 適用範囲
上記(1)ないし(3)で述べた妊産婦に関する規制は、所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての女性労働者に適用されます。

 

2. セクシャル・ハラスメント

①定義
雇用法は、「セクシャル・ハラスメント」を、「言葉的か否か、視覚的か否か、身振り又は物理的接触のいずれかを問わず、勤務の過程にある人物に向けられた、攻撃的又は屈辱的若しくはその人物の幸福を脅かす、その人物の望まない性的なふるまいをいう。」と定義しています。

 
②雇用主の義務等
セクシャル・ハラスメントの申立てがあった場合、雇用主又はこれに準ずる者は、大臣が定める方法によって当該申し立てについて調査しなければなりません。
 
調査の結果、セクシャル・ハラスメントの存在が証明されたと考えるときは、雇用主は①セクシャル・ハラスメントを行なった者が労働者であるときはⅰ予告期間を設けない解雇、ⅱ降格又はⅲⅰⅱよりも軽い処分(無給の自宅待機処分の場合にはその期間は2週間を超えてはなりません。)のいずれかの懲戒処分を、②セクシャル・ハラスメントを行なった者が労働者以外の者である場合にはその人物が所属する適切な懲戒主体に処分を委ねるものとされています。

 
③被害者への救済
雇用主が調査を拒否した場合、申立を行なった者は労働局長に対して申立をすることができます。労働局長に対して申立がなされた場合、労働局長は雇用主に対し調査を命じることができます。また、セクシャル・ハラスメントを行なった者が個人事業主たる雇用主であった場合、労働局長は人的資源大臣が定める方法により自ら調査を行います。

また、連邦裁判所は2016年にセクシャル・ハラスメントを理由とする損害賠償請求を肯定しているため、被害を受けた労働者は加害者に対し直接損害賠償を求める訴訟を起こすことにより救済を受けられる可能性があります。

 
④適用範囲
上記2及び3で述べたセクシャル・ハラスメントに関する雇用法上の規制は、所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての労働者に適用されます。

 
 
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TNY国際法律事務所(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)
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ライター

荻原星治

荻原星治

マレーシア弁護士と共に、会社設立手続き、各種ライセンス取得手続き、雇用契約書や就業規則の作成等の労務関連、売買契約書等の各種契約書の作成、法規制の調査、意見書の作成、DD等のM&A関連、訴訟・紛争案件、不動産譲渡手続き、商標登録等の知的財産権関連等、幅広い法務関連サービスを提供している。多くの日系企業と顧問契約を締結している。 また、ヤンゴン(SAGA ASIA Consulting Co., Ltd.)、バンコク(TNY Legal Co., Ltd)、大阪・東京(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、テルアビブ(TNY Consulting (Israel) CO., LTD.)にも関連事務所を有する。

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