2019-04-24

【連載⑩】就業規則の大解剖~タイの経理現場から~

今回はいよいよ後半のメインであり、タイならではの文化的社会的背景が凝縮されているとも言える福利厚生の内容が規定されたパートになります。ここまで読み進められている方にとっては、何となくタイの就業環境について少しは馴染みが出てきた頃かと思います。今回はその真骨頂といったら大げさですが、集大成的なものになりますので、存分に堪能できるよういつものように具体的な事例を交えながら取り上げていきます。
 

 

目次
第7章 福利厚生と権利

7.1 社会保険
7.2 社会保障基金
7.3 従業員の制服
~7.10まで(7.4以降は次回以降の取扱)

 
今回も前回に続いて1章まるごとどころか、今回だけでは収まらないため、次回以降複数回に分けてこの第7章福利厚生と権利を取り上げていきます。タイのみならず、ベトナム始め東南アジア諸国であれば共通するものも中にはあるのではと思いますので、そのあたりも意識して読まれると良いかもしれません。

 

タイの社会保険の概要

最初は社会保険です。これは国が強制的に定めたものですから最初に来るのは順当です。 タイでは1990年に社会保障法なるものが定められ、日本と同様国民皆保険制に近いものが設定されています。労使折半で50%を会社が負担することも義務付けられています。
具体的には下記のようなものが社会保険でカバーする範囲として、本就業規則の中で定義されています。
 
・労働とは無関係な原因により傷病をり患した際の手当
・出産手当
・労働とは無関係な原因により障害を負った際の手当
・労働とは無関係な原因により死亡した際の手当
・子供手当
・老齢年金手当
・失業手当
 
なんだか労働とは無関係との記載が目立ち、労災対応は範囲外なのかという疑問もありますが、大丈夫です。次の社会保障に含まれています。説明上はこの社会保障と一緒に案内したほうが分かりやすいので、ここからは社会保険と社会保障基金をまとめてご案内します。

 

実用性は低いが加入すべき?毎月単位の社会保険

まず社会保険料としての徴収は、毎月単位のものと年に1回の2種類あります。
毎月のものが冒頭に述べた労使折半で、負担上限額が決まっている最大750バーツ(約2,500円)のものです。支給額の5%で上限が750バーツのため、実際には15,000バーツ以上の月給の人はすべからく750バーツということになります。実は1,000バーツになると一時アナウンスがあったのですが、結局施行まで至らず今も750バーツのままです。
 
こちらがメインの社会保険料で、医療機関での診療費の一部もここでカバーされます。但し、ここがミソなのですがこの医療機関での恩恵は非常に使い勝手が悪いもので、社会保険局の指定リストに入っている公的医療機関から事前に指定して届け出したところでしか対象になりません。しかもこの公的医療機関というのが、設備が整っているとも言えない公立の病院が大半です。しかも混雑ぶりも酷いらしく、風邪にかかって朝受付しても1日がかりということのようです。これでは実際に会社勤めしている人にとっては次回以降に案内する民間の医療保険を利用するのが一般的で福利厚生としての価値もかなり高いです。
 
ちなみにこの社会保険、日本人も例外なく対象となります。但し、取締役については対象外にすることも可能です。可能というのは知らずに加入している方もたまにいるからです。そもそも取締役は恩恵を受けられませんのですぐに退会手続きをしたほうが良いです。さらに言うと現地法人で取締役になっていない日本人についても、駐在員の場合は会社が本社もしくは現地法人で保険を付帯する場合がほとんどで、現地採用の雇用者についても会社が契約している医療保険で対応するのが通常です。しかも日本とタイの間に社会保障協定もないので、駐在員にとっては単純に2重負担にすぎませんが強制加入なので仕方がありません。
 
とはいえ、ローカルスタッフにとってはこの加入がちゃんとされていることは最重要です。失業手当や出産手当も少ないながらも出ますし、将来の年金もかなり少ないとはいえ(月数千バーツ=約1万円程度)、ないよりはもちろん良いことは言うまでもありません。
 
それと日本人にとっても実は別の観点で重要です。このローカルスタッフの4名以上3ヶ月継続した社会保険の加入履歴が日本人一人が就業に必要なVISAとWork Permitを取得及び更新するのに必須の要件だからです。なので実は福利厚生というよりは、きちんと実行されているかのほうが雇用者側にとっては重要だったりします。
このVISAとWork Permitの話だけでもたくさんの物語になってしまうのでそれはまたの機会にしましょう。

 

懐に優しい年1回の社会保険

さて、もうひとつの年1回徴収の社会保険ですが、こちらは労災保険が主なものとなります。実は従業員の雇用時など増員する際にも、見込みで計算して1年分(暦年基準)を前払いします。このときの保険料は完全に会社負担で、被雇用者である従業員の負担はありません。定期的なものは毎年2月に前払いとしてまとめて発生しますが、負担金額はかなり少なく一人あたり数百バーツといった具合で、会社側の懐にも優しいだけに日本人責任者の多くにとっても、そんな支払いあったの?という認識で、たまにこの支払内容は何でしょうかという問い合わせをいただいたりします。
 
社会保険だけでだいぶ字数を費やしてしまいました。このペースだとこの第7章は3・4回を要するくらい内容盛りだくさんになりそうです。ということで、今回は2つ目の従業員の制服まではご案内したいと思いますので、もう少しお付き合いください。

 

普段着として当たり前に着用されるユニフォーム

この制服ということですが、言ってしまうとユニフォームです。工場などをイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、社名やロゴの入ったジャンパー的なもの、あるいはタイならではで多いのはポロシャツなどといったものです。
実は当社でもポロシャツを採用しています。工場でない一般企業のオフィスワーカーでも、タイではユニフォームとして社名・ロゴ入りのポロシャツを支給している会社は多く、むしろそれが普通です。銀行などに行くと分かりますが、統一された派手めなポロシャツを着用しているのが目に入るはずです。最初は日本人にとっては馴染みがないので違和感あるかもしれませんが、通勤電車などに乗って周りを見渡しもわかるとおり、自宅からウィークデイの普段着として着用している人がほとんどです。かくいう私も今では何ら違和感を持たず自宅から帰宅まで、もちろん夜の会食なども含めて社名・ロゴ入りポロシャツをもう何年も当たり前のように着用しています。
 
しかも、この会社が支給するユニフォームですが、何と税法にも定められており、1年につき一人2着までと記載されています。それを超えると個人の給与所得として課税されてしまうというわけです。ということで、就業規則に記載しているからといって、一人何着も会社で支給できるわけではありませんが、通常は2枚で十分でしょう。むしろ1年につきとなっているため、毎年定期的にデザインを変えて2着支給することも可能で、当社もそうしております。

 
やはりこの福利厚生の章は奥が深いため、普通にエピソードを紹介していくだけでも字数を費やしてしまいます。それでも、普段馴染みのないものであればあまり冗長的にならない程度には実例を交えたほうが分かりやすいはずです。しばらくは複数回に渡るこのテーマですが引き続き宜しくおねがいします。

 
<本記事に関するお問い合わせはこちら>
Accounting Porter Co., Ltd.
Web:http://aporter.co.th/

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ライター

但野和博

但野和博

Accounting Porter Co., Ltd.にてManaging Directorを勤めています。弊社は日本からの進出や会計サービス全般をタイ国で提供して6年経つ会計事務所です。代表である私が日本で2社の上場会社のCFO通算6年の経験を活かして親身なサービスを提供できるよう心がけております。 これまで累計100社以上のお客様からご相談いただいた様々な実例もあり、本コラムではそんな実例の中からタイで就業するあるいは就業を想定した方向けに駐在員、現地採用の方を問わずお役に立てる情報をお届けしようと思います。 内容としては身近な給与などの取扱いから、経理処理、はたまたそれらをひっくるめたタイの日系企業で身近に起きたことなど雑感的なところも交えながら、気軽に読めるようなトーンで展開していきますのでどうぞよろしくおねがいします。

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