2019-03-12

設立時に株式会社と有限責任会社のどちらを選ぶべきか ~ベトナムの会社形態の相違点~

2019年に入ってもベトナムへの新規進出の話は数多くご相談をいただいています。そんな中、会社形態としてそもそも有限責任会社と株式会社の違いの説明をすることが多くあります。やはり日本では株式会社が原則であり、ベトナムで多くの会社が取っている類型である「有限責任会社」と聞いてもピンと来ない場合も多いようです。

そのため、今回は有限責任会社と株式会社の重要な違いについて説明したいと思います。

 

1. 出資者数

まず、一番大きな相違点は出資者の「数」です。
有限責任者の場合、出資者が一人の一人有限責任会社と、出資者(ベトナム法上「社員」と表現されます。)が二人以上の二人以上有限責任会社が規定されており、それぞれで組織構造が異なります。有限責任会社は50人まで(自然人・法人を問わず)が出資者となることができます。

他方、株式会社の場合、少なくとも三人以上の株主がいなければなりません。50人を超える出資者がいる場合には株式会社にしなければなりませんが、そのようなケースはほとんどなく、上場するようなケースでない限りは有限責任会社で組織上は事足りてしまうというのがベトナムの現状です。そのため、多くの会社は有限責任会社で設立されています。

 

2. 機関設計

また、機関設計については一人有限責任会社の場合と、二人以上有限責任会社の場合、株式会社の場合で、それぞれ組織構造が異なります。

一人有限責任会社の場合、そもそも出資者が1人しかいないため、その者が出資者として会社の重要事項を決めればよいということになります。そのため、出資者(社員)の集まりである社員総会を置く必要があるわけではありません。出資者が法人である場合、複数の代表者(「委任代表者」といいます。)を選出して会議で重要事項を決めたいという場合、社員総会を置くという選択も可能です。

 二人以上有限責任会社の場合、出資者が複数名いるため、それぞれの出資者の委任代表者を選び、社員総会を構成します。この場合、一人の出資者から複数選ぶことも可能ですが、各委任代表者はそれぞれの出資者が有する出資割合の範囲で権限を分担して有するに過ぎません。たとえば、51%を有する出資者の委任代表者が一人(A)、49%を有する出資者の委任代表者が二人(BとC)いる場合、社員総会でBとCが賛成、Aが反対したとしても、Aのほうが過半数分の割合を有しているのでAの反対が過半数の意見ということになります。

株式会社の場合、出資者を社員とは呼ばず「株主」と呼ぶことになり、株主総会を構成します。こちらは日本に近いので理解しやすいです。

株式会社の場合には、有限責任会社にはない取締役会を法律上設ける必要があります。
また、有限責任会社では必須ではない監査役会の設置も原則として必要となります。もっとも、株主が11名未満かつ、法人株主が総株式の50%未満のみを保有する場合は強制ではありません。それ以外にも、20%の取締役を独立取締役とし、取締役会に直属する内部会計監査委員会を置くことで、監査役会を置かなくてよい場合もありますが、あまり実例はないのが現状です。この監査役会のトップは、資格を有する公認会計士である必要があるため、これも株式会社とするハードルの一因となっています。

 

3. 総会の議決権

社員総会や株主総会における議決の割合も両者において異なります。
それぞれの定足数や決議要件は最後の表にまとめているのでご覧ください。

 

4. 株式会社にする意義

上記を見ると、そもそも株式会社にする意義がどのようなところにあるかが重要になります。特に株式会社にする必要がなければ、有限責任会社で良いと考えられるためです。
大きな違いの一つは、株式会社の場合、株式の種類によって配当優先株や議決権優先株を発行することが可能となります。そのため、出資だけしてもらいたいが議決権は制限したいようなニーズ、配当を優先的にほしいというニーズを満たすことが可能となります。

また、株式のほうが譲渡において自由譲渡が前提となっている点や、50人を超える多数の株主の存在が認められている点、株式会社として上場するという選択肢を持てるという流動性の面から株式会社が選ばれるケースもあります。その他、株式会社のほうが監査役会や取締役によるガバナンスを効かせやすいという点から選ぶ場合もあります。

株式会社にする理由は様々ですが、ベトナムでは有限責任会社が原則的な企業類型となっていること、後に有限責任会社から株式会社に変更も可能であることは念頭においた上で、どのような会社形態にするかを検討すべきでしょう。

その他の相違点も含めて以下の表に整理していますので、ご確認ください。


 
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ライター

工藤拓人

工藤拓人

CAST LAW VIETNAM 代表、弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。 2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年より弁護士法人キャストホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に『メコン諸国の不動産法』(大成出版社、2017年、共著)、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社、2016年、共著)など。

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