今回のテーマは「雇用調整」です。
企業を取り巻く環境は常に変化しており、事業の縮小や再編を行うケースも少なくありません。一方で、それに伴う部門の閉鎖や撤退は、企業にとって非常に難しい決断を伴うものです。同時に、そこで働く従業員の方々にとっても、大きな変化をもたらす出来事となります。
そこで今回は、「部門閉鎖によって従業員10名の雇用調整が必要」というケースを例に、労使間の合意に基づいて雇用調整を進めるための具体的な手順を紹介します。
ステップ1 部門閉鎖の背景やスケジュールを10名全員に同時に説明
ステップ2 個別面談で社内異動を打診
ステップ3 各従業員の労働契約の種類と残存期限を確認
ステップ4 労使間の合意に基づく退職に向けて個別交渉
ステップ5 各従業員と「労働契約解除の合意書」を締結
ステップ1 部門閉鎖の背景やスケジュールを10名全員に同時に説明
まずは対象となる従業員10名全員に対して、部門閉鎖の決定に至るまでの背景や今後のスケジュールを説明し、現状を正しく理解してもらいます。
<部門閉鎖の背景やスケジュールを説明する際のポイント>
・10名全員に同時に説明することで、従業員が噂や憶測によって不安を感じたり、情報の食い違いが発生することを防ぐ。
・部門閉鎖の理由や現在の経営状況、今後の方針を明確かつ誠実に説明する。
・最終的な部門閉鎖の時期や各従業員への個別面談の実施時期など、具体的なスケジュールを提示する。
ステップ2 個別面談で社内異動を打診
部門閉鎖をするからといっていきなりお別れではなく、社内の他部署で活躍できる可能性がある人材には、まずは社内異動を打診しましょう。
<社内異動を打診する際のポイント>
・現在の経営状況と今後の方針を率直に伝え、異動の必要性を説明する。
・本人の希望やスキルを最大限考慮し、最適な異動先を提案する。
・異動することでどのような経験がつめたりスキルが身につくのか、本人のキャリア上のメリットにも言及する。
【異動に合意する場合】
新たな職務内容や条件について説明し、新しく合意した内容へ労働契約を修正し締結し直します。
【異動が難しい場合】
ステップ3「労働契約の種類と残存期限を確認」へ進みます。
ステップ3 各従業員の労働契約の種類と残存期限を確認
ベトナムにおける労働契約には、無期労働契約と有期労働契約とがあり、有期労働契約の場合は、残存期限まで雇用を維持できるか否かによって、進め方が異なります。
<労働契約の種類と残存期限の確認のポイント>
【有期労働契約の残存期限まで雇用を維持できる場合】
労働契約期間の満了をもって雇用を終了(=労働契約の更新をしない)します。
「労働契約の更新をしない」という判断は、雇用主の判断のみで実施でき、雇用主側に法的なリスクが発生しません。
なお、書面による事前通知が必要ですが、現行法では日数の規定は特にありません(旧労働法では15日前)。
ただし、スムーズに本人が次の職へ就けるよう、少なくとも15日~30日前までを目安に事前通知をしましょう。
【有期労働契約の残存期限まで雇用を維持できない場合、又は、無期労働契約の場合】
ステップ4「労使間の合意に基づく退職に向けて個別交渉」へ進みます。
ステップ4 労使間の合意に基づく退職に向けて個別交渉
ステップ3で、有期労働契約の残存期限まで雇用を維持できないと判断したり、契約の種類が無期労働契約の場合は、労使間の合意に基づく退職に向けて個別に交渉しましょう。
<労使間の合意に基づく退職に向けた交渉のポイント>
・現在の経営状況を率直に伝え、納得して退職して頂けるよう誠意ある説明に徹する。
・労使間の合意に基づく退職にむけた交渉の潤滑油として、退職金の加算や再就職支援など、できる限りのサポートを検討する。
ステップ5 各従業員と「労働契約解除の合意書」を締結
労使間の合意に基づく退職として話に折り合いがついた場合は、後々の不要なトラブルを防止すべく、合意の証として「労働契約解除の合意書」を締結しましょう。
<「労働契約解除の合意書」の作成時のポイント>
・次の内容が漏れなく明記された書面を作成する。
・退職日
・労使双方の義務と権利(引継ぎ事項、返却すべき貸与物など)
・給与や未取得の有給休暇の精算に関する金額、期限、方法、条件
・退職後の機密情報保護義務に関する事項
・合意の証として、双方署名の上での締結とする。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
雇用調整は、企業にとっても従業員にとっても辛いプロセスです。しかし、丁寧なコミュニケーションと誠意をもって対応することで、労使間の合意のもとで解決を目指すことができます。
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