2025-04-24

放置していませんか?形骸化した賃金制度が企業を壊しかけた怖い話

「現地法人設立から10年以上が経つのに、賃金テーブルや昇給率表が当初のまま放置され、気が付けば制度が形骸化していた......」
といった状況に悩まれていませんか?

今回は、賃金管理制度が形骸化した結果、現在の人事方針や市場相場に沿わない甘い賃金管理が仇となり、ベトナム現地法人が存続危機に陥ってしまった製造業の事例をご紹介します。

後半ではこの危機を乗り越えるために実際に行った対策も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。


賃金管理上の問題点が浮き彫りに


新任の駐在員が「他社と比べて給与や待遇が良すぎるのでは?」という違和感から、ICONICにお問い合わせをいただいたことがきっかけでした。

以降、現行の人事制度の妥当性を外部の視点を入れてヘルスチェックする中で、賃金管理上の問題点が主に3つあぶり出されました。

①給与水準が人事方針に比べて必要以上に高すぎる

現行の給与水準を外部マーケットと比較したところ、上位5%に入る高水準であることがわかりました。
これは、当社の人事方針(優秀層の雇用や離職防止に資する上位25%程度の給与水準を実現したい)に比べて必要以上に高く、是正が必要な状態であることが判明しました。
実際、周辺他国の現地法人に比べて、1製品当たりの労務費比率がベトナムだけ極端に高いことも、その後の本社調査で併せてわかりました。

②賃金レンジは10年前に定めたもが更新されず形骸化

詳しく賃金状況を調べてみると、在職者がほぼ上限を超過した金額となっていました。
賃金レンジは進出当初の10年前に定めたものはありましたが、労働市場の相場変化に合わせて更新されておらず制度が形骸化......。

そのため、現在の相場に基づいた各職責ごとに適正な賃金レンジが会社として定められていない状況でした。
要するに、同じ職責のまま仕事内容に変化がなかったとしても、青天井に昇給することができる状態になっていたのです。

③10年前の市況に合わせて設定した昇給率表でずっと運用

一方、昇給運用においては、設立当初の市況に合わせて作成された昇給率表に基づくルールを10年間継続していました。
実際、過去の昇給実績を調べてみると、ほぼ毎年、全社平均で10%以上の昇給をしていました。
(※現在は、5〜6%程度が平均的な昇給率ですが、10年前は8〜10%程度が平均的)
また、賃金レンジの上限を超過しても、従来の9割の昇給は保証される設計となっており、昇給率が抑制されにくい状況でした。
このままの状態がもう5〜10年続くと、海外製造拠点としての存在意義を問われ閉鎖の危機に晒されかねない状況まで来ていました。


課題解決にむけた対策


こうしたした課題を解決するために、以下3つの観点から賃金制度の見直しと改善を行いました。

①人事方針に沿った適正な賃金レンジを再設定

まずは、当社の事業計画や人事方針、そして現在の労働市場の給与相場をもとに、職責ごとに「適正な給与の下限値と上限値(賃金レンジ)」を新たに設定しました。

特に、優秀な人材の確保や離職防止を目的として、給与水準が市場の上位25%程度に入るような設定としています。

これは、以前のように市場の上位5%に入る過剰な高水準ではなく「狙った層に届く、かつ持続可能な水準」を目指した調整です。

②昇給ルールの見直し(毎年の相場に応じた調整と昇給制限)

次に、昇給の運用方法も見直しました。

従来は、設立当初(約10年前)に作られた昇給率表に基づき、毎年10%以上の昇給が当たり前のように行われていました。しかし現在の昇給相場は平均5~6%程度であり、大きな乖離が生まれていました。

そこで、昇給率は固定ではなく、毎年の相場や業績に応じて標準昇給率を変動させる仕組みに変更。また、賃金レンジの上限に近づくにつれて昇給率が下がる設計にし、上限を超えた場合は昇給を停止するルールも新たに加えました。

これにより、適正な水準内での賃金管理がしやすくなりました。

③既存社員の反発を防ぐための段階的な導入

とはいえ、10年間続いた「気前のよい昇給」が突然なくなると、社員から強い反発が出ることは避けられません。

実際、標準的な社員でもこれまでより昇給率が2~3%下がることが想定されました。これを一度に適用すれば「改悪だ」と感じる社員が多数出てしまう恐れがあったため、3年かけて段階的に移行する方針を採用しました。

その結果、大きな反発は起きず、わずか数名の退職はあったものの、大半の社員は勤務を継続。今では徐々に相場に即した昇給運用に近づいています。


まとめ


いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した事例は特別なものではなく、ここ10数年の賃金上昇が激しかったベトナムでは、多くの日系企業が同様の課題を持たれています。
持続可能な企業経営に向けて、ぜひご参考ください。

ただいまICONICでは賃金管理や人事制度の専門家による「30分無料コンサルティングサービス」を提供しております。
自社の賃金制度が今の市場や方針に合っているか不安な方は、ぜひこちらからご相談ください。

30分無料コンサルティングに申し込む

 


 

弊社では採用から組織づくりまで、ワンストップでサポートしております。 
下記に該当するお悩みをお持ちの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

1.欠員補充や事業拡大、組織の見直しのため、ベトナム人や日本人を採用したい。
人材紹介サービス

2. 新規採用、報酬制度の設計・見直しに向けて最新データが欲しい
給与や昇給率に関するレポート(2024年5月給与調査:回答企業数265社)

3. 労務管理のアウトソーシングを検討している
労働許可証申請代行、就業規則など社内規則の作成、労務相談

4. 人事制度や人材育成に着手する前に現状を把握したい
組織診断サービス「iconic Empower」

5. 人事制度(等級・評価・報酬)を設計・改訂し、適用したい
人事制度設計コンサルティング

6. 幹部人材の育成や主体的な従業員の計画的育成について検討している
マネジメント・評価者・目標設定の研修、育成体系構築コンサルティング

  >>ICONIC組織人事コンサルティングのサービスラインナップ

お問い合わせ

ICONIC Japan Co., Ltd.|HRR Team

このライターの記事一覧へ

関連する記事

放置していませんか?形骸化した賃金制度が企業を壊しかけた怖い話に関連した記事一覧です。