こんにちは。
ICONICで人事労務コンサルティングを担当しております長浜です。
人事制度設計の現場で、とにかく企業様からよく言われることとして「シンプルな制度にしたい」というご要望があります。
今回は、この「シンプル」とは、どういうことなのか、複数の設計現場での経験を通じて、考えをまとめてみたいと思います。
何が「シンプル」であるべきか?
◯見た目がシンプル!?
よく、イメージされやすいのはこの点です。
特に、実際に各社員の目に触れる評価シートなどの見た目が簡素であることや手当の種類が少なく、ペイロールの見た目がシンプルであることなどはご要望いただきやすいです。ただ、単純に簡素にするだけだと、むしろ、判断基準が主観に頼らざるを得なくなったり、手当をひとまとめにし、何のための手当かの説明ができず、差額の根拠を説明できなかったり・・・という状況に陥ることがよくあります。
◯判断基準がシンプル!?
よく見過ごされがちな「シンプルさ」で、見た目がシンプルと相反しやすい点として、「判断基準がシンプル」という点もあげられます。
行動評価を主として、各項目を5段階で評価する制度はよく見受けられます。さらにこの5段階評価が上司の主観に頼っていることはとても多いです。これは一見簡単なようにみえて採点者は判断基準が判然とせず採点に悩むことになります。さらに最終結果を手にした部下は、その採点根拠が判然とせず「結局何が悪くてこういう結果になったんだろう」と悩みを抱えてしまいます。“誤ったシンプル“は、実は、評価シートを作る側の設計者にとってだけシンプル(評価基準の見た目と評価シートの体裁がシンプル)なのであり、主役である評価する側とされる側にとっては難題を残すことになります。
そこで、重要なのは、判断基準が明確で、わかりやすい評価項目の設定です(定量評価項目や目標設定による評価はこの点で優れています)。もしくは、定性的な評価項目には、全項目に汎用的な表現で基準展開するのではなく、具体的な行動レベルでの評価基準展開をしてあげることなどが有効です。
◯理解するのがシンプル!?
ベトナム人社員が簡単に理解できる(=分かりやすい)、納得感を感じやすい(=理解するにあたり、違和感を感じない)制度にすることができれば、説明が「シンプル」と言えるでしょう。
新制度を説明してみて、ベトナム人社員の反応が「まあ、それはそうだよね」となることが1つのゴールイメージです。その意味では、目標設定による業績評価の手法は、目標設定に割く工数負担は重たいものの、評価される側の社員側にとっては、何をしたら自身が評価されるのか理解しやすく、納得感が高まることが多いと感じます。
◯運用がシンプル!?
制度を運用していく上でのルールがシンプルであること、細かいルールがなくても運営できることは、制度運営する人事部側にとっては重要です。
なるべく少ないルールで回せる制度を意識して設計しましょう。また、一連の制度概要がひとところにまとまってルールが可視化されていることも欠かせません。
「シンプル」こそ、難しい!
以上、徒然なるままに、ご要望の多い「シンプル」な制度とは、何がシンプルであるべきなのか、思うところをまとめてみましたが、言うは易し行うは難し。
そぎ落としてよいところを特定できる=そぎ落としてはいけないところ(=本質的に重要なところ)が何かがわかる、であり、「シンプル」を極めることこそ、その道を究めることに通じるなぁと感じる今日この頃です。