2014-10-11

漏れなくダブりない職務定義書を整備するには?

さて、前回は等級定義書を作成し、社員に公開することの重要性について書きましが、実際に何階層かに等級をしき、それぞれの等級毎の違いを定義していこうとすると、なんとなくの肌感覚で違いは分かっているのだが、言葉にできない」もしくは「言葉にしようとすると、途端に抽象的になってしまう」というお悩みを頂戴することが多いです。

等級定義が曖昧になってしまう根本的な要因として、そもそもその等級に格付けされるポジ ションの職務定義が曖昧であったり、抽象的であったり、抜け盛れがあったり、ということが考えられます。もし、しっかりとした職務定義がなされていない場 合は、等級定義書を作成する前段階として、遠回りのようで一番近道なのは、職務定義書を整備することです。

では、どのように職務定義書を整備したらよいでしょうか?基本的には、以下のステップを進めてみてください。

 

1. 組織図上の各ポジションに対して職務記述書をドラフトする

この時、具体的な表現に落とし込んで言語化するのに困ったら、同業他社の求人表での職務記述例や同業界や同職種で働いている候補者の職務経歴書上の職務記述例などが参考になります。

具体例を参考にしながら、自社の場合でも該当する項目はキープし、該当しない項目は削除、その他抜け漏れがないかを自社業務に照らして追加する、という作業を各ポジションに対して実施します。

 

2.各ポジションの職務記述書上の業務内容を、KJ法の要領で中項目程度の粗さで職務分析マトリックス上に業務仕分けをする

ここで言う、「中項目程度」というのは、例えば「部門管理」「業務計画」「顧客対応」「外部連携」などの粗さが想定されます。これらをカテゴリータイトルとし、このカテゴリーに属すと考えられる職務記述書上の業務記述を下記のイメージのように仕分けていきます。

こういったシートを部門単位で作成します。

【職務分析のイメージ】
役職:Director
部門管理:
業務計画:
顧客対応:
外部連携:
Maneger, Team Leader, Staffも同じ要領で作成し、縦軸に職階を、横軸に業務カテゴリーをとり、マトリックス図化します。

 

3. 職務分析マトリックスを俯瞰し、職務記述の抜け盛れやダブりをチェックし、抜け盛れがあれば補い、ダブりがあれば、意図的でないものについては削除・改訂する

例えば、以下のように業務仕分けがなされていた場合ですと、
「Team Leaderに部門管理業務がなくて大丈夫か?」
「Manager/Team Leaderに計画業務がなくて大丈夫か?」
「本当にDirectorまで含め顧客対応する必要があるのか?」
「顧客対応に対する職務記述が全職階で同一だが、本当にそれでいいのか?」
「外部連携業務はManager/Team Leader陣に求めなくて大丈夫か?」
などのチェック質問を自問し、適宜、抜け盛れの追記、表現の改訂、重複削除をしていきます。

精査済みの職務分析マトリックス表を横に取ると、具体的で漏れなくダブりのない職階毎の職務記述が出来上がります。これを元に、同一等級に格付けされた各ポジションの職務記述を俯瞰して、共通する要件を抽出すると、それが、具体的な等級定義のベースとなります。

横浜国立大学卒業後、経営コンサルティング企業で中小企業の新規事業支援を担当。2006年よりJICAウガンダで職業訓練校を調査し、2007年にベトナムの三井住友銀行ホーチミン支店で法人営業を担当。2010年からICONICにて主に組織人事コンサルティング事業の立ち上げに従事し、支援した人事制度構築プロジェクトは150件超。2023年、ICONICベトナム法人のGeneral Directorに就任。

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