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年末が近づき、昇給・賞与案の策定が本格化している時期ではないでしょうか。
このとき、現地法人の立場で毎年のように直面するのが、こんな悩みです。
- 現地としては必要性を感じているのに、本社から理解を得られない
- 「その根拠は?」「他社はどうなの?」で話が止まる
- 結局「去年と同じくらいで」という落としどころになってしまう
この悩みを解消するためには、意思決定者が納得できる形で昇給案稟議を整理し直すことが欠かせません。今回は、本社稟議/経営会議で通りやすい昇給案稟議をつくるための3点整理法を紹介します。
昇給案稟議が止まるのは、「現地の肌感」が主観でしかないとき
現地で「この昇給幅は必要だ」と感じる背景には、採用難、物価上昇、最低賃金改定、競合の動きなど、現場のリアルがあります。
ただ、本社稟議や経営会議では、そのリアルな肌感を客観的に説明できる判断材料とともに示されないと、どうしてもこう言われます。
- 「それはあなたの肌感なだけでは?」
- 「特定職種/職層だけなぜこんなにあげるの?」
- 「なぜ、そこまで上げる必要があるの?」
現地の問題意識が間違っているわけではありません。ただ、「どれくらい上げたいか」だけが先に出て、その水準が必要な理由や、上げない場合の影響がセットで示されないと、意思決定として判断できず、話が止まりやすくなります。
本社稟議/経営会議で納得を得やすい昇給案稟議は、3点で整理されている
意思決定者が昇給案稟議を見るときのポイントは、大きく以下の3つです。
- 外部相場とのバランス(External Equity)
- 社内の賃金バランス(Internal Equity)
- 予算インパクトとリスク(Cost Impact / Risk)
この3点が同じテーブルに並ぶと、昇給案は「担当者の感覚論」から「経営判断の提案」へ変わり、議論が前に進みやすくなります。
昇給案稟議の3点整理法
ここからは、この3点をどう整理して示すと稟議が通りやすいかを、順に見ていきましょう。
① 外部相場とのバランスの整理(External Equity)
まず必要なのは、「市場として今どの水準にあるか」を客観的に示せる相場資料です。相場は、たとえば全国平均だけではなく、業界・職種・職位ごとの差がどこにあるのかまで見える形で示せると、「その数字はどの職種の話?」「業界が違えば前提も変わるのでは?」といった突っ込みに対しても、議論を前に進めやすくなります。
加えて、本社稟議/経営会議では、相場を示すだけではなく、自社の現状とどうズレているのかを整理して提示できるかが重要になります。意思決定者が知りたいのは、たとえば次のような点です。
- 自社の給与水準は相場の中でどの位置にあるのか
- 相場とのギャップが大きいのは、どの職種/職層なのか
- 今年の昇給で、どのズレを優先的に補正すべきか
- その結果、どの職種/職層に厚く配分し、どこは抑えるべきか
こうした相場と自社のつけあわせまで整理できると、「全体昇給率を何%にするか」だけの議論ではなく、相場ギャップの補正として筋の通った昇給配分へ議論を進めやすくなります。
② 社内の賃金バランスの整理(Internal Equity)
外部相場を踏まえたうえで、次に問われるのは「社内としてその配分が適切か」という観点です。意思決定者が気にするのは、たとえば次のような点です。
- 貢献度・成果に対して昇給配分が妥当か
今年の成果や役割遂行度が高い人に厚く配分し、そうでない人は抑えるなど、評価と昇給の対応関係が説明できるか。 - 役割責任・職務価値の序列と賃金水準が相応に対応しているか
責任や難易度の高いポストほど、賃金水準が相応に高い水準になっているか。 - 同一ポスト内で給与差が開き過ぎていないか
同じ役割・業務を担う社員間で給与に過度な開きが生じている場合、一方は昇給を抑制し、もう一方は補正的に厚く配分するなど、社内バランスを整えるための打ち手が盛り込まれているか。
こうした観点が反映されると、昇給案は「相場に合わせる」だけでなく、社内の評価・役割序列・既存賃金との整合性の面でも筋が通る提案として説明できるようになります。
③ 予算インパクトとリスクの整理(Cost Impact / Risk)
最後に必要なのは、昇給を行った場合のコストだけでなく、行わない場合のリスクまで含めた比較です。短くても構いません。
- 補正しない場合の採用難・離職リスク
- 採用コストや育成コストに跳ね返る見立て
- 逆に上げすぎた場合の固定費増大リスク
- 今年の業績の中でどこまでが現実的な予算感か
このように「コストとリスクのセット提示」があると、意思決定者は「どの水準なら合理的か」を判断しやすくなるため、合意形成が建設的に進みやすくなります。
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