2016-12-21

基本給はどう決めるか? ~賃金制度移行時の差額解消法~

こんにちは。
ICONICで人事労務コンサルティングを担当しております長浜です。

最近、ベトナムでの人事制度構築についてご相談を頂く機会が増えています。
その中でも、マネジメントの頭を悩ます人事制度まわりのトピックスであり、求職者の方にとっても気になる、「基本給」についてご紹介しています。

前回までのコラムで、新しい賃金テーブルを設計したあとの賃金移行シミュレーションの進め方を解説しましたが、想定した移行先として想定した等級のMin-Maxレンジ内にあるべき基本給額が適切に収まればスムーズな移行ができるのですが、Min値に届かなかったり、Max値をはみ出したりしてしまうことが往々にしておきます。これは、現状の変革を求めて賃金カーブを再設計している場合、あえて現状から乖離した賃金カーブを実現するためのテーブルを引いているため、こうしてレンジ内に収まりきらない社員が出てくるのは当然の帰結です。
むしろ、全社員が新しい賃金テーブルのレンジ内に収まっているということは、現状の焼き直しにすぎないと言えます。さて前回、Min値に届かない場合はその差額を「移行原資」として捉え、Max値に届かない場合は差額を「調整手当」として捉えるというお話をしましたが、今回はこの二つの言葉について詳しくご説明します。

 


「移行原資」とは何を意味するのか

「移行原資」とは、その名の通り、「この新しい賃金テーブルへ現在の賃金テーブルから移行するにあたり会社が負担するコスト」という意味です。

通常「移行原資」は、制度移行のタイミングで一度に全額Min値まで切り上げるのが理想的とされています。

しかしながら、人件費の急激な増額に耐えられないような場合は、移行時には想定のMin値よりも低く、人件費の増加額の許容範囲と折り合いがつく値まで当該等級のMin値を下げてスタートし、毎年、段階的にMin値を切り上げ、数年間で当初想定していたMin値まで切り上げていくという激変緩和措置をとる方法もあります。

この「移行原資」がたつ状況というのは、つまるところ、新賃金制度のルールに基づくと、その社員に対する会社からの役割等の期待値に対して基本給額が「Underpaid(=払わな過ぎ)」の状態と言えます。

そのため、制度移管と同時にか段階的にかはさておき、いずれにしても、少なくとも想定等級のMin値まで切り上げなければならないと考えるのです。

 

「調整手当」とは何を意味するのか

逆に「調整手当」とは、「将来の昇給額を前倒して支給するための調整弁としての手当」と読み取ってください。

「調整手当」は、将来の昇給を前倒して支給しているだけなので、以後の昇給査定で昇給額が確定した分だけ調整手当額を減額し消しこんでいく対象となります。
つまり、「調整手当」が立っている限りにおいて、理想的には将来の手取りベースの昇給がストップすることになります。

しかしながら、手取りベースの昇給がストップすると、とりもなおさず、離職圧力を生みますので、ここでも激変緩和措置として、昇給査定額の例えば50%だけを「調整手当」の消し込みに使い、残りは手取りベースの給与額の昇給を実現するという進め方もあります。
「調整手当」がたっている状態というのは、「移行原資」と線対称の考え方をし、新賃金制度のルールに基づくと、その社員に対する会社からの役割等の期待値に対して基本給額が「Overpaid(=払い過ぎ)」の状態と言えます。

そのため、Max値をはみ出した額分の査定昇給の積み増しが終わるまでは手取りベースの昇給をストップさせるか、または、昇給ペースをダウンさせるかしなければならないと考えるのです。

 

以上のように「移行原資」や「調整手当」を解消していく中で、描いた新しい賃金テーブルを数年かけて実現していくことになるのです。

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ライター

長浜みぎわ

長浜みぎわ

ICONIC 組織人事コンサルティング部統括部長/取締役/賃金管理士。 横浜国立大学卒業後、日本及びフランスの中小企業を対象とする経営コンサルティング企業にて、新規事業の開拓支援を行う。2006年より青年海外協力隊としてウガンダにて民間職業訓練校における人材育成需要及び労働市場で求められる人材需要に関する調査を実施。2007年に渡越後、三井住友銀行ホーチミン支店にて法人営業を担当。2010年、ICONIC取締役に就任。

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