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第1回は、ICONICが1月6日に発刊した最新版『2026年版ベトナム昇給・賞与レポート(詳細版)』の調査結果をもとに、「2026年のベトナム昇給・賞与相場の潮流ー最新調査から見える今年の特徴ー」を整理しました。まだお読みでない方、また読み返したい方はこちらからどうぞ。
第2回となる今回は、「業態で異なる!現地法人の賞与原資の考え方」をお届けします。
この時期になりますと、現地法人の経営者様から、次のようなご相談をよく頂きます。
「自社単体で売上や利益を直接コントロールできない場合、賞与原資は何を基準に決めればよいのでしょうか?」
今回は、この問いに対して、業態や事業フェーズの違いという切り口から、賞与原資の考え方を整理してみたいと思います。
売上・利益をコントロールできる事業体の場合
現地法人が一定の裁量を持ち、
- 売上拡大
- コスト管理
- 利益創出
に直接関与している事業体の場合、賞与原資は、売上や営業利益の目標達成度や昨対成長、予実差といった業績指標を軸に決定するのが、基本的な考え方になります。
もっとも、こうした事業体であっても、常に当該年度の損益だけで判断すべきではない事業フェーズもあります。
例えば、商社や製造販社のベトナム拠点の立ち上げ初期では、当該年度の損益が赤字であったとしても、
- 主要顧客や販売チャネルの開拓状況
- 取引開始件数や受注パイプラインの形成状況
- 現地営業体制やバックオフィス体制の安定稼働状況
などといった、そのフェーズで企業が重視している成果の達成度をもとに、賞与原資を判断するケースも多く見られます。
このような段階では、売上や利益の多寡そのものよりも、「事業を軌道に乗せるための前提条件がどこまで整ったか」という視点に立って判断する方が、実務上は合理的な場合も少なくありません。
グループ経営の中で特定の役割に特化した拠点の場合
一方で、ベトナムには、
- 輸出加工を主とする製造拠点
- ITオフショア開発拠点
- 建設図面作成などを請け負うCADセンター
などといった、グループ経営の中で特定の役割に特化して機能する拠点も多く存在します。こうした拠点では、単体の売上や利益が現地法人の努力をそのまま反映しているとは言い切れない状況もあります。
そのため、
- 生産量や稼働率
- 納期遵守の状況
- 品質指標
などといった、拠点に求められている役割をどの程度安定的に果たせたかを示す指標を、賞与原資検討の材料として用いるケースが多く見られます。
もっとも、各拠点に期待される役割はさまざまであり、同じ拠点でもフェーズによって異なることも大いにあります。どの指標を用いるべきかを一律に定めることはできません。
整合性を保ちやすいのは、「その現地法人社長が、本社からどのような基準で業績評価されているか」という視点に、現地法人自体の賞与原資の考え方を揃えることです。
会社業績と切り離して設計する、という考え方
拠点の役割や事業フェーズによっては、そもそもの考え方を変えて、会社業績をあえて賞与に直接反映させない方が適切と考える企業もあります。
その場合、まずは会社業績とは切り離したかたちでマーケット水準なども参考にしながら賞与のベースラインとなる水準を定め、そのうえで、個人評価に応じて賞与月数を上下させるという賞与制度を採用します。このアプローチは、次のようなケースでわりと多く見られます。
① グループ内で特定の役割に特化した拠点の場合
こうした拠点では、会社全体の業績と連動させた賞与をあえて設けず、
- 標準となる賞与月数は毎年固定
- 会社業績による増減は設けない
- 個人評価に応じて賞与月数のみを上下させる
といった、個人業績賞与のみのシンプルな賞与制度で運営する方が合理的なこともあります。
② 長期スパンで成果が顕在化する事業の場合
不動産開発や大規模インフラ開発プロジェクトのような長期スパンの事業では、年ごとに業績指標を細かく設定すること自体が難しいケースもあります。そのため、
- 市場における競合他社の標準的な賞与月数
- 当該年度に想定されるプロジェクトの進捗状況
といった要素を踏まえてベースラインとなる賞与水準を定め、そこから個人評価に応じて上下させる、という運用が取られることもあります。
おわりに
賞与原資の考え方に、唯一の正解はありません。重要なのは、自社の業態や事業フェーズに適した賞与原資決定ロジックを持つことです。
こうした賞与原資決定の判断に必要な賞与動向を、より定量的に把握したい方は、「2026年版ベトナム昇給・賞与レポート(詳細版)」で、地域別(11+省市)・業界別(14+業界)・業態別・職位別の最新データをご参照ください。
📍次回予告(第3回)
昇給原資はどう決める?ー「賞与と同じ発想」ではうまくいかない理由ー
「昇給は、賞与と同じ感覚で「今年は業績がいいから、昇給も厚くしよう」と判断すべきものではありません。昇給は、賞与以上に中長期的な人件費構造への影響が大きく、あわせて、マーケットにおける給与水準との関係も踏まえた、総合的な人事判断が求められます。次回は、こうした視点を踏まえながら、昇給原資をどのように考えるべきかを整理します。