前回に引き続き今回も、評価制度構築の進め方について、話を深めて参ります。
前回は評価の構成要素とそれぞれの要素ごとのスコア配分についてお話しました。では、一旦、「自社としては社員の何を評価したい」という評価の構成要素を確定させた後に、さらに各構成要素を評価項目に細かく落とし込むにはどうしたらよいかについて検討していきます。
以下に、前回解説したよくある一般的な評価の構成要素ごとに、具体的な評価項目に落とし込むにあたってのリソースをまとめます。
今回は、このうち、業績評価項目に焦点をあてて、具体的な評価項目の立て方を考えてみます。
①業績指標が定量的に量れる職種
期初にKPI(Key Performance Indicator:主要業績指標)を設定し、これに対する期末の達成度を数量的に把握し、評価者による私情の介在なく評点を自動計算するスタイルが一般的です。
売上目標達成率、新規顧客開拓数、品質管理指標達成率などはイメージし易い例です。自社ですでに活用中のKPIがあればそれを人事評価項目として流用すればよいですし、もし、「これからKPIを設定したいがまだない」という状況であれば、競合他社でどのようなKPIを設定しているのかをベンチマークするのが最も効率的かつ現実的に参考になります。
②業績が定量的に図りにくい職種
一方で、多くの企業が業績評価項目の設定において悩みを抱えやすいのは、こちらのバックオフィス系職種など)で、いかに業績評価項目を設定するかという点です。この悩みに対して、方針は大きく2つあります。
1.MBO(Management by Objective:目標管理)制度
評価期間中に達成すべき業務目標(必ずしも「業績」目標でなくてもよい)を各社員に設定させ、「いつまでに」「何を」「どこまでやるか」を明記させ、その業務目標の達成状況を、業績評価指標になぞらえて採点する方法です。
・メリット
業績貢献の度合いを定量的に測りにくいような職種であっても、例えば「第2四半期末までに●●業務マニュアルへの社長承認を得て、社内展開する」などというように、ある程度、職種の汎用性がきくこと。
・デメリット
社員それぞれの業務目標の設定スキルの高低、又は、レビュアーである上司の目標設定レビュースキルの高低によっては、制度自体が形骸化(既に日常的に問題 なくこなせているような平易な目標しか設定しない、達成・未達成の判断ができない目標設定になっている等)してしまうこと。
2.業績評価項目は設定せず、その他の評価構成要素にスコア配分を全て振る方法
業績評価指標の設定が難しい職種なのであれば、こちらの方が適切です。
・メリット
末端層の社員で、「まずは求められる最低限の職能の体得に焦点をあてて業務に励んで欲しい」と期待する社員に対しても、一律にMBOを設定させる必要は必ずしもなく、能力・行動評価項目で細かく職能の成熟度合いを評価できること。
・デメリット
定量的に評価できる業績評価項目に比べて、能力・行動評価項目は定性的な項目であることが多いため、評価基準の客観性が担保されにくい、私情や主観に流されやすいこと。
評価の公平性を担保する上でも、定性項目に対しては、「Excellent-Good-Average-Poor-Very Poor」といったような抽象的な表現に留めるのではなく、より具体的な指標を伴う評価基準書を整備しておくことが重要になります。
次回は、能力・行動評価項目の具体的な設定方法について解説します。