2018-01-26

ベトナムにおける労働組合設立による主な影響3つ

こんにちは。
ICONIC 組織人事コンサルティング部門の前田です。

前回の「ベトナムにおける就業規則の登録手続き」では、登録手続きを大きく2つのステップに分けて紹介しました。就業規則登録の過程では、前回紹介しましたように、労働組合が登場します。

その際、「社内労働組合は設立しなければならないのか?」というご質問をよくいただきます。

結論から申し上げますと、労働組合設立を希望する被雇用者が5名以上いる場合に限り、雇用者に労働組合の設立義務が発生しますので、必ずしも設立しなければならない訳ではありません(Decree 98/2014/ND-CP 第5条)。
逆に、雇用者が被雇用者に対して労働組合の設立や加入を強制することは禁止されている(ベトナム労働法第190条)ため、あくまで被雇用者の希望に基づいて設立することになります。

そこまでを踏まえると、次は「労働組合を設立した方が良いのか?」という問いにつながります。
今回は労働組合を設立した場合の主な影響について、現時点の法令に基づき、3つご紹介します。

 

影響 1:組合員が負担する労働組合費が発生する

労働組合を設立した場合、組合員は社会保険料算定の基準となる賃金の1%を負担するものとされています(「1908/QD-TLD」)。被雇用者が組合への加入に消極的になる理由の一つとして、この労働組合費の個人負担による手取り給与の減少があります。

これにより徴収された労働組合費のうち、60%は社内労働組合、残りは上部労働組合の活動に充てられることになります(「906/TLD」)。

 

影響 2:雇用者が負担する労働組合費の一部を社内の組合活動で活用できる

現在、雇用者が負担しなければならない労働組合費は、社会保険料算定の基準となる賃金の2%とされており、社内労働組合の有無に関わらず、納付義務があります(ベトナム労働組合法第26条、Decree No.191/2013/ND-CP第4条、第5条)。

もし社内労働組合を設立しなければ、雇用者が負担した労働組合費は社内の活動に充てることができず、単なる支出となりますが、設立した場合、その費用の68%(2018年より。2017年6月11日以前の「270/QD-TLD」では65%、2017年6月12日から2017年12月31日までの 「906/TLD」では67%)は社内労働組合、残りは上部労働組合の活動に充てられることになります(「1784 / HD-TLD」)。

※社内労働組合を設立した場合には、設立していない時期に雇用者が負担した組合費のうち、社内労働組合が利用できる分について返還を受けることができます(「1908/QD-TLD」)。その他の運用については、地域によって異なる可能性があるので、ご確認ください。

 

影響 3:労働組合の意見聴取を社内で行うことができる

就業規則の登録手続きや賃金テーブルの登録には、当局へ提出する前に労働組合の意見聴取が必要になります(ベトナム労働法第93条2項、第119条3項)が、労働組合を設立した場合、その際の手続きを社内で実施することができます。

社内に労働組合がない場合には、社内の状況をよく知らない地域の上部労働組合の協力を得なければならないため、労働組合を設立し、社内で実施する方が意見聴取をスムーズに行えることが多いです。

 

弊社では、労働組合の設立支援サービスを提供しております。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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ライター

前田純

前田純

ICONIC 組織人事コンサルティング部。名古屋大学を卒業後、日本の会計事務所にて約4年間、中小企業の会計・税務といった「カネ」に関する業務を行う。その後、「モノ」を扱う製造業を経て、2015年よりベトナムへ進出。ICONICにてベトナムにおける人事労務に関する業務を行うことで、世の中の「ヒト・モノ・カネ」について国内外を通して経験。

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