2025-06-27

アジア系外資の昇給動向から見えた、人事方針の違いとは?

ベトナム人材市場でますます存在感を増すアジア系外資企業。

ICONICの実施した最新調査「ベトナム人材トレンドレポート2025|求職者動向から読み解く人材戦略」では、出資国によって昇給方針に明確な差が見られました。

もはや「日系企業の平均値」だけを見ていては、人材獲得・定着の競争には勝てません。今こそ、他社の昇給動向に目を向ける時。

今回は、最新調査の結果を元に、組織人事のプロであるICONICの視点から見た「出資国別の人事方針の違い」を一部ご紹介します。

最後までお読みいただくと、競合と自社のスタンスの差を客観的に捉え、人材戦略最適化のためのヒントを得られます。ぜひご覧ください。


シンガポール・台湾系企業に見る積極姿勢


シンガポール系企業:高昇給率が示す攻めの姿勢

調査結果では、シンガポール系企業勤務者の【33.3%】が「20%以上の昇給があった」と回答。

サンプル数に限りがある可能性も念頭に置くべきですが、特定の職種・人材層に対して、大幅な昇給で競合と差をつけようとする企業が存在している実態は注目に値します。

台湾系企業:中間層を着実に引き上げる設計

台湾系企業では「10~20%未満の昇給」が【29.4%】と、アジア系外資企業の中ではシンガポールに次ぐ2番目に高い昇給水準となっています。。

20%を超えるような大幅な昇給は少ない一方で、多くの社員に対して安定的かつ一定の水準で昇給を行うスタンスがうかがえます。限られた層に集中投資するのではなく、「広く、手堅く」社員のモチベーションを高める設計といえるでしょう。


日系・韓国系・ベトナム地場企業に見る「安定志向」


日系・韓国系・ベトナム地場企業では、最も多いのが「5~10%未満の昇給」。これはいずれの国においても20%以上の大幅な昇給は限定的であり、過度に攻めるのではなく、一定の安定性と持続性を重視した昇給設計が主流であることを示しています。

一方で、日系とは一線を画し、韓国系・地場系では「昇給なし」や「減給」の割合が比較的高く、人件費管理に対して厳格かつ慎重な姿勢を取っている企業が多いことも見てとれます。


中国系企業は「昇給抑えめ」傾向が顕著


中国系企業では「5%未満の昇給【21.2%】」「昇給なし【17.3%】」「減給【13.5%】」という結果が出ており、全体的に昇給水準がかなり抑えめです。

こうした傾向の背景には、中国本土の経済減速や、海外拠点でのコスト削減の必要性があると考えられます。たとえば、2024年は中国国内の景気が伸び悩んだ年であり、本国から現地法人への予算配分が抑えられた結果、ベトナム拠点でも昇給を見送る企業が増えた――そんな構図が見えてきます。


昇給率に表れる、企業の「人材への向き合い方」


昇給率の差は、単なる企業体力の違いではありません。むしろそこには、「どんな人材に、どのような投資を行い、どう定着させたいのか」という、企業の人材戦略の考え方そのものが反映されています。

ベトナム進出が進むアジア資本企業の多くは、製造・IT・サービスなどさまざまな業種で多様な人材ニーズを抱えています。とくに近年では、工業団地の開発余地や立地優位性(中国国境に近い北部など)を背景に、サプライチェーン再構築の受け皿としての注目度も高まり、人材の需給バランスが崩れがちな地域も増えています。こうした環境下では、自社の人材定着力が、事業継続性を大きく左右するようになっています。

いまや日系企業にとっても、「日系企業の平均値」に安心していられる時代ではありません。競合となる非日系企業の動向にも目を向け、厳しさを増す人材獲得・定着競争のなかで、どのように生き抜いていくかを真剣に考える必要があります。

そのためにも、ベトナムの労働市場でいま何が起きているのか――こうしたトレンド情報を継続的にキャッチアップしていくことが、人事戦略を磨く第一歩となるはずです。


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本記事でご紹介した昇給率のデータは、あくまでごく一部です。

レポート本編では、アジア系企業だけでなく、欧米系企業における昇給傾向や、職層別・世代別の離職理由の動向、就職先を決める際に重視される要素など、ベトナムでの人材獲得・定着を考える上で有用なデータが多数掲載されていますのでぜひダウンロードしてご活用ください。

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横浜国立大学卒業後、経営コンサルティング企業で中小企業の新規事業支援を担当。2006年よりJICAウガンダで職業訓練校を調査し、2007年にベトナムの三井住友銀行ホーチミン支店で法人営業を担当。2010年からICONICベトナム法人にて組織人事コンサルティング事業の立ち上げに従事し、支援した人事制度構築プロジェクトは150件超。2023年、ICONICベトナム法人のGeneral Directorに就任。賃金管理士。ISO30414リードコンサルタント/アセッサー。

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