2019-06-17

人事制度をローカライズする 【第2回】報酬制度のローカライズ

▼関連記事はこちら
人事制度をローカライズする 【第1回】等級・評価制度のローカライズ
人事制度をローカライズする 【第3回】制度導入を見据えたプロジェクトチーム編成
人事制度をローカライズする 【第4回】毎年、制度の見直しをする


前回に引き続き「人事制度をローカライズする」というテーマで、今回は、報酬制度のローカライズの観点をまとめてまいります。
 
前回のコラムで述べた通り、人事の基幹制度の中でも特に報酬制度は、「基本的にはローカライズすべき制度」であり、労働関連法規や雇用慣習、労働市場相場等による制限の中での設計が求められます。

 

法規制による最低限の要求事項に合わせてローカライズする

まず初めに、ネガティブサイドの人事施策がどこまで許容されうる法体制なのかのチェックが必要です。例えば、減給、降格、昇給ゼロ、賞与ゼロなどは法令上どこまで合法的に実施できるか、更に、法令上は実施可能であるとしても、雇用慣習上のインパクトはどうかなども確認できるとなおよいです。このような会社にとっての労務管理の最後の切り札に通じるネガティブサイドの施策を、十分な調査なしに、「そのようなケースはほとんどない」=「法律上できない」と誤解してしまい、制度設計自体からネガティブサイドの設定を排除してしまうケースが散見されますので、ここでの法令理解は正確な理解が求められるところです。

 

現地の雇用慣習に合わせて報酬構成をローカライズする

次に、報酬構成をローカライズします。中でも特に、手当や非金銭的な待遇の構成は、各国事情を色濃く反映しやすいパートですので、しっかり周辺企業を調査して、導入率の高い手当や待遇の設計漏れがおきないよう配慮する必要があります。導入率が高い手当や待遇の設計漏れがあると、そのうち、社員から他社ではあるのになぜ自社ではないのか?という不満の声があがってくることになります。

 

労働市場相場に合わせて現金報酬水準をローカライズする

更に、相場のチェックと、それを基にした、現地法人における自社賃金水準についての方針を決めていく必要があります。全国的な給与水準のトレンドデータとの比較もさることながら、人材需要の高い業界や職種であれば、人材競合となる他社の給与水準を個別具体的にベンチマークできるとなおよいです。また、その際は、現金での月収水準だけでなく、賞与を含めた年収水準、月間平均残業代、労働条件(労働時間や労働環境、有給日数等)、その他の非金銭的な待遇等も比較した上で、総報酬水準からの逆算で現金による月収水準を検討するとよいでしょう。

 

労働市場の動向に合わせて報酬還元水準をローカライズする

最後に、これは毎年の人事部のオペレーションに組み込むべきことですが、標準的な賞与支給月数や昇給率の動向を毎年ベンチマークし、無意識的な相場からの大きな乖離を避けるべく、昇給予算や賞与予算をとるようにする必要があります。日本では高すぎる昇給率も現地では標準的ということや、日本では低すぎる賞与月数も現地では十分ということは、よくあります。必要以上に支給しすぎる必要もないですし、必要なのに予算を絞りすぎても現地法人運営が立ちゆきません。相場に馴染む適度な報酬還元水準を維持することが重要です。

  • Social facebook
  • Social twitter

ライター

長浜みぎわ

長浜みぎわ

ICONIC 組織人事コンサルティング部統括部長/取締役/賃金管理士。 横浜国立大学卒業後、日本及びフランスの中小企業を対象とする経営コンサルティング企業にて、新規事業の開拓支援を行う。2006年より青年海外協力隊としてウガンダにて民間職業訓練校における人材育成需要及び労働市場で求められる人材需要に関する調査を実施。2007年に渡越後、三井住友銀行ホーチミン支店にて法人営業を担当。2010年、ICONIC取締役に就任。

このライターの記事一覧へ Arrow box

関連する記事

人事制度をローカライズする 【第2回】報酬制度のローカライズに関連した記事一覧です。