2015-06-02

ベトナム労働法に基づく解雇とは?

「ベトナムは労働者側の法律だから、解雇ってなかなかできないんですよね?」とお問い合わせいただくことがよくあります。確かにシンガポールほど会社側が解雇権を行使しやすいわけではありませんが、解雇ができないわけではありません。今回は解雇とその対策についてお伝えしていきます。

与えた職務を全うせず、何度注意しても改善されない。勤怠不良が目立つ、会社のルールを守らず、他の社員に悪い影響を与えている。そういった社員の方がいた場合、「解雇」という言葉が頭をよぎったこともおありかと思います。

「解雇」には、2種類あることをご存知でしょうか。

 

(1)普通解雇

仕事をする上での能力に問題がある、病気や事故によって長期入院などが必要となり職場復帰の見込みがない、また、自然災害などの不可抗力により人員削減を余儀なくされる場合などに行われる解雇
(妊娠・育児を理由に女性労働者を解雇することはできません)

・労働者が頻繁に、労働契約に定めた業務を遂行しない場合
・労働者が病気・事故によって一定期間にわたり治療を受けたが、労働能力を回復できない場合
・天災などの不可抗力により、あらゆる措置を取ったが、やむを得ず人員削減を行う場合
・労働契約の一時履行停止期限後、15日以内に職場復帰しない場合

 

(2)懲戒解雇

労働者が労働規律に違反した場合(就業規則の服務規律違反など)や、著しい非行があった場合に、懲戒処分として行われる解雇
(妊娠、産休、育休中(12ヶ月未満の子)の女性労働者は労働規律違反で処分することはできません)

【懲戒処分の種類】
a)戒告(書面での通知)
b)6ヶ月を超えない昇給期間の延長、降格
c)懲戒解雇

(懲戒解雇事由)
・労働者が窃盗、汚職、賭博、故意に人を傷つける行為、職場内での麻薬の使用、機密情報の漏えい、知的所有権の侵害行為を行い、会社の資産、利益に重大な損害をもたらす行為、または特別重大な損害をもたらす恐れがある行為を行う場合
・昇給期間延長処分(または降格)の制裁を受けながら、制裁期間中に再犯した場合
・労働者が正当な理由なしに、月に5日または1年に合計20日、無断欠勤した場合

【懲戒処分を行うにあたっての必要事項】
・過失の立証
・労働団体の代表部の参加
・処分対象労働者の出席(弁護士等に弁護の依頼をすることはできる)
・処分は文書にて通知

 

つまり、冒頭で例を挙げた、
仕事上の能力不足により解雇⇒普通解雇
会社のルール違反による解雇⇒懲戒解雇

と事例によって、解雇の種類が異なります。ただしどちらにしても、解雇は最終手段です。非常に労力もかかります。話し合いを行い、双方合意による退職(通常の退職)があくまでも原則です。

一つひとつの出来事は些細なことだったとしても、改善を促す場合は書面での通知を行っておいたほうが後々のトラブルを防ぐことができます。小さな出来事が積み重なった後、降格や解雇の懲戒処分をするかどうかご相談をいたくだことが多いのですが、これまでの注意事項について書面での証拠(戒告)がない場合、処分を行うことができないからです。戒告を行う際は必ず、社員からもサインをもらうようにしてください。労働組合がある場合は、労働組合の代表者からもサインをもらっておいたほうが良いでしょう。

 

【まとめ】社員とのトラブルを避ける3つのポイント

1.試用期間は、仕事に必要な能力があるかどうか見極めることのできるチャンス
2.注意・指導をするときは書面で
3.試用期間後は有期労働契約(2回)の締結を

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